第5回「私は自分の仕事が大好き大賞」が
先日、パシフィコ横浜で開催されました。

昨年に引き続き、特別審査員で参加されていただきました。

5人のプレゼンターがそれぞれ、
自分の仕事への思いを紆余曲折の人生ドラマとともに
発表してくださり、

私も一層、自分の仕事が好きになりましたし、
やる気、モチベーションが湧きました。

一人で美容室や飲食店をやっていると、
どうしても日々の営業に心が埋没してしまうこともあります。

やっている人の心の楽しさや明るさが
一人美容室や飲食店の売上に相関するもの。

だからこうやって
定期的に、自分の仕事を見つめる機会を設け、
自分の仕事への愛着を増すということは
とてもすばらしいなと思いました。

 

5人のプレゼンターの中でも
感動大賞を受賞された渡部佳菜子さんのプレゼンが、
私の心にも刺さりましたので、
シェアさせていただきます。


佳菜子さんの第一声は、

「農業はこれからおもしろくなる」

佳菜子さんのお父さんの言葉だそうです。

 

福島県西会津町に生まれた佳菜子さん。
ご両親は農業を営んでいた。

しかし、佳菜子さんが生まれたときには
農業は衰退産業。

捨てられた畑がどんどん荒れていく。
西会津の田園風景がなくなるのではと心配になる。

ある年、
きゅうりが台風でなぎ倒されたことがあったそうです。
惨憺たる光景。

それでも佳菜子さんのお父さんは、

「自然なことなんだからしょうがない。
次はもっと向き合ってやるぞ。
これからもっと面白くなる!」

佳菜子さんには意味がわからなかったそうです。

 

しかし幼かった佳菜子さんにとって、
自信に満ちたお父さんの姿がかっこよかった。
大好きだった。

だから小学生のころには、
「わたし、大きくなったら農家になるの!」
と周りに宣言!

お父さんもお母さんも喜んでました。

ところが思春期になり、
農家になりたいということが
恥ずかしい気持ちにもなりました。

中学生になったとき、
友達に夢を聞かれ、

「農家になりたい」

といったら

「ダサくない?」
と言われてしまった。

だんだん農家になりたいということを
周りに言えない。

けど、心の中には、
しっかりと農家になりたいと
ずっと思い続けることができた。

だから高校を卒業して
福島の農業短大に入学。

 

「福島の農業を元気にしよう!」

農業短大の友達たちと、
農業の未来を明るく話すことができるようになり、
ようやく自分らしくなった。

 

その後、ともに夢を語り合い、
刺激しあった仲間とともに卒業を迎える。

そこからすべてが変わってしまう。

卒業の日は、
2011年3月9日。

その二日後、
東日本大震災。

この日を境に変わってしまったのです。

それから長く長く
原発事故の風評被害にさらされる。

新潟との県境にあり、
原発からは120キロ。
空気中の放射能の量も問題はない。

しかし事実より恐ろしいのはイメージ。
つまり風評被害。

スーパーに卸すブロッコリーが、
放射能検査を何度も受けているうちに
くさってしまう。

佳菜子さんのお父さんの主な収穫物である
きゅうりの価格は大暴落。
1箱5キロが200円。

 

このまま生活していきるのか?
福島の農業を元気にしたいという夢は
あきらないといけないのか。

不安と恐怖でいっぱい。

 

しかし、

このままではいけない
と佳菜子さんは立ち上がりました。

そして、町や県のPRイベントに積極参加。
お客様との交流を増やしていきます。

はじめてのことばかりで
とまどいながらも
福島の野菜を知ってほしくて

「福島のおいしい野菜、販売してます。
おひとつ、いかがでしょうか!」

ところが、
その時ふいに、
聞こえてきてしまった声。

「なんで、福島なんて来ているのかしら。
福島のものなんて食べたくないわ。
福島のものを売るなんて非常識よね」

佳菜子さんは聞こえないふりをした。
そんな心ないことを言う人がいるなんて信じたくない。

けど、なんどもその類の声は聞こえてきた。

ついに
佳菜子さんは何も言葉を発することが
できなくなってしまった。

福島、と声をだすだけで、
商品を手にとってもらえない。

彼女の心の叫びは、

「私たちは農家は単に野菜をつくっているのではない。
野菜を育てているんだ!

何年も歳月をかけ、
土を育てることから始めて、
種を撒き、水をあげ、
太陽の光をいっぱいに注ぎ
心を配りつづけて、

まるで自分の子どもを育てるような気持ちで
野菜を育てている」

しかし、
その全てが否定されている気持ちになってしまった。

 

そのとき、ひとりの女性が目の前に。

彼女は思いがけないことを言った。

「きゅうり、ください」

「え?」

思わず佳菜子さんは聞き返してしまった。

その女性は続けて言いました。
「福島のきゅうりっておいしいわよね」

佳菜子さんの心に光が射しました。

「はい!福島のきゅうりは日本一なんです!」

 

この日から変わったそうです。
大切なことに気付いたそうです。

イメージとはつくりもの。
ひとりひとりがつくっているもの。

福島のやさいを売るのが非常識という人もいれば、
福島のきゅうりはおいしいよねという人もいる。

イメージを私がつくればいい。

そして、命の使い方を決めた。

野菜をつくっていることだけが仕事ではない。
福島の野菜のイメージも作るんだ。
そして、未来の福島の農業をつくるんだ!

その思いを胸ね、
農家の格好をして日本全国をまわって伝える歩くように。

その全てが福島の農業の未来につながっている。

佳菜子さんは体中からあふれ出すように

「わたしは
農業と自分の仕事が大好きです。
農業という仕事を心から愛しています。

食べることは生きること。
それを担っているのが農業。

農業は人の命をつなぐんです!」

 

佳菜子さんは
これからも福島の農業の魅力を伝え続ける。

そして、彼女は最後に締めくくりました。

「農業はこれから面白くなる」

 

聞いていてヒタヒタと心に迫るものがありました。

志を持って、仕事やお店をやっていたとしても、
決して、みんながみんな、応援してくれるわけではありません。

 

なんでそんなことやっているの?
そんなことをやって意味があるの?

 

そんな、
心ない言葉に傷つくことは
がんばっている人にこそあるかもしれない。

 

出る杭は打たれる、といいますが、
志をもってがんばっているということは
普通の人とはやはり違うチャレンジをしているということ。

新しい世界を切り開いているということ。

だから、理解されなかったり、
足を引っ張られることもあるわけで。

 

けど、その一方、
必ず、応援してくれる人がいる。
応援の声をかけてくれる人がいる。

 

佳菜子さんに
「きゅうりください」
と言った女性のように。

 

その一言がどれだけあなたの心に光を差し込むことか。

 

考えてほしいと思います。
思い出してほしいと思います。

初めてあなたがお客様から
「ありがとう」
と言われたときのこと。

 

私が新卒で入社したのは住宅メーカー。
そこで工事現場の監督をやることになりました。

現場監督はお客様から叱られることが多い。

 

初めて担当したSさんのお宅、
次のTさんのお宅、その次のHさんのお宅、

立て続けに、
ちょっとした工事上のことで
責められることが続きました。

 

けど4軒目として担当したMさん邸。

一生懸命、丁寧に4カ月間工事を進めていき、
引き渡しのときに、初めて言われました。

 

「松本さんが監督さんでよかったよ。
ありがとう」

この一言は忘れ泣いです。
Mさんの優しい笑顔を忘れないです。

 

あなたのことを応援してくれる人が絶対にいる。
その人とのかかわりの中で、大切なことにきっと気付くことができる。

あなたの心には灯が宿るに違いない。
それが商売を楽しいものにするし、有意義なものにする。

 

「私は自分の仕事が大好き大賞」

また来年も開催されます。

2018年10月22日、東京国際フォーラムだそうです。

私はすでにスケジュールに入れました!

 

ぜひ、みんなで行きましょう!