やきとり屋の鳥貴族が10月1日から値上げをしますね。

フードとドリンクは280円(税別、以下同)から298円になると。

これについて考えてみます。

久しぶりに鳥貴族に行きました。

家の近所に鳥貴族がオープンしました。

そこで久しぶりに行ってみました。

思ったより、ずっとおいしい!とくにムネ肉が想像よりずっとジューシー。
このボリューム、おいしさで280円というのはすごい価値だなと、感嘆しました。

接客も元気よく、きびきびとしている。いいお店ですよね。

妻と2歳の子どもと3人でいきました。

開店直後の17時すぎにいったので、席もまだまばらにしか埋まっていません。だからこそですが、案内してくれたスタッフさんが、

「こちらの席とこちらの席、どっちがいいいですか?」

と選択肢を用意してくれました。

子連れだとこれ、うれしいです。子どもが座りやすかったり、他の方になるべく迷惑をおかけしないところを選びたいですからね。

ちょっとしたことですが、とてもうれしい接客でした。

そして家族で3800円ほどのお会計。安い!

確かに多くの人を惹きつける、今、一番勢いのある居酒屋チェーンですね。

以前、私の研修に鳥貴族のFC店の店長さんが参加されたときに、次のようにおっしゃっていました。

「ウチのお店は、おいしくてボリュームあって安い。それってすごい価値だなと思うんです。

ご家族連れが多いんですけど、たまの外食での家族団らんだと思うんです。

そんなに家計に余裕があるご家庭ばかりではないと思うので、他のお店だったら、月に1回の家族団らんになる予算で、ウチなら2回来れる。

つまり家族団らんの楽しい時間が2倍になるわけで。それってすごいいいことしているな、と思うんです」

本当にそういうお店だな、と腑に落ちました。

鳥貴族の値上げでの売上アップはいくら?

さて、280円が298円ということですから、6.4%の値上げですね。

東洋経済で鳥貴族を扱った記事を確認してみますと、繁盛店で1日の来店数は席数の2.1回転だそうです。

私の住んでいるところは普通の住宅地ですから、1回転とかですかね。

席数は99席だったので、1日100人の来店としましょう。

客単価は2000円とのことなので、2000円の6.4%分アップ。

つまりひとりあたり128円のアップですね。これで1日100人ですから、12800円が1日の売上アップ。

毎日営業のようですから、1カ月で38万4千円の売り上げアップ。

人件費が増えることや野菜の高騰が理由のようですが、たしかに30~40万円くらいアップすれば、そこにあてることができるでしょう。

 

60gのお肉で原価率は35%

1985年に第一号店「鳥貴族 俊徳道店」がスタート。

立地は非常に厳しいところだったようですね。

そして、「150円、250円、350円の3本立ての均一価格」が最初のメニュー構成ですが、ここが訴求力に欠けていたようで、苦戦されたそうです。

で、思い切って打った手が、「完全な均一価格」。

従来の焼き鳥店が1本25グラム、原価率は28%前後。そこに対して、60グラムで250円(当時)で提供し始めたそう。原価率は48%にもなったと!

今は店舗数が増えて原価35%に押さえられていますが、当時は厳しい原価設定ですね。

けど、大きな肉のほうがジューシーに仕上がるという信念がありました。

おいしいものを提供して喜んでもらいたい、という気持ちと、わかりやすく訴求力のある均一250円の打ちだしで、来てもらいたいという思い、それがミックスされた方針だったのですね。

そして、これがズバリ、的中していくわけです。

 

お客様の喜びと儲けるということ

1989年に消費税3%導入になり、そのときに280円へ。それ以来ずっとこの価格を保ってきていたわけです。

それが今回298円に上がります。けど、そこにはいろいろとお客様のことを思ったプライドを感じます。

鳥貴族は串打ちは各お店で手作業で、にこだわっているそうです。

「非効率でコストアップでも続けないと鳥貴族らしさが失われる。焼き鳥は串打ちという最後のひと手間を加えることで本当においしくなる」

と、大倉社長はおっしゃっているそうです。

けど、一方、タッチパネルでのオーダーなども取り入れて効率化するところはしていく。

そして、「もっと接客に力を注ぎたい」ということだそうです。

まずなんといっても、おいしいものを提供しよう、心地よく過ごしてもらおう、食事の時間を楽しくしてもらおう、という強い信念を感じます。

それをリーズナブルに提供したいという思いを感じます。

今回、値上げしなくても、鶏肉のグラムを落としたりすれば、コストアップ分を吸収できたのかもしれません。けど、それをしなかった。

一番、おいしく提供できるグラムが今のグラムだからでしょう。串打ちのしかり、です。

お客様のことを本当に考えているのだな、と思います。

そして、お客様の喜びと儲けることはコインの裏表みたいなものです。

どっちが欠けてても、長い目でみたら、うまくいきません。

そのバランスをキープするための298円なのでしょう。

最後に

お客様への愛情を感じるお店ですね。

そして努力に努力を重ねて280円をキープしてきたのでしょう。

しかし環境変化でどうしようもなく298円へ。値上げにはなりますが、なんともすがすがしいといいますから、お客様のことを真剣に考えている姿勢、プライドがにじみ出ていると思います。

こういう本気の姿勢の商売からは学ぶことが多いなとつくづく心に思いました。

これからも鳥貴族さんに通いたいなと思います。

 


松本望太郎

この記事を「知らないよりは知っていた方がいいだろう!」「為になった!!」「分かり易い!!」と言う場合は、是非「いいね!」「シェア」「ツイート」「はてなブックマーク」「メルマガ登録」をお願いします!